気分障害や感情障害

うつ病 気分障害 就労移行支援 あるてぃー
  • 気分(ムード Mood)や感情(エモーション Emotion)の変化に関連する疾患である。
  • 長い期間にわたって持続している、情動(過度な哀しみや喜びなど)の障害。
  • 気分障害はおもに、次の2つが代表的な分類となっている。
  1. うつ病(単極型うつ病)
  2. 双極性障害(躁うつ病)

DSM-5では、気分障害という診断がなくなり、双極性関連障害群と抑うつ障害群が別々にカテゴライズされました。

うつ病の古い分類


1.クレペリン

  • 早発性痴呆(現在:統合失調症)
  • 躁うつ病(現在:双極性障害、うつ病も含まれていた)

2.内因、外因、心因という分類

  • 内因性うつ病:主にもともと持っている性格や気質、認知傾向など内面的な事が原因で発症するもの
  • 外因性うつ病:主に身体に由来する器質性、症状性、中毒性などで脳や身体の病気が原因で発症するもの
  • 心因性うつ病:主に心理的原因で、家庭や社会、人間関係などの環境的なストレスとの相互作用により発症するもの

3.メランコリー親和型性格

メランコリーの意味は、憂鬱、はればれしない落ち込んだ気分、抑うつのこと。

上記の内因性うつ病を誘発しやすい病前性格(うつ病の前の性格)として、テレンバッハという人が唱えた。几帳面、良心的、相手に配慮しすぎるといった特徴を持つうつ病の病前性格であり、自分の所属する「社会や集団での役割」に応えようとするなかで、不調が生じうつ病を発症する

 

心理学でいう気分と感情の違い


心理学的には、気分(Mood)感情(Emotion)には明確な違いがあるようです。

最も大きな違いとしては、その持続する時間です。

感情は、一瞬から数分ほどで消えていくのに対して、気分は長く、数時間から日をまたいで数日間も続くことがあります。

気分から特定の感情が惹起されやすくなり、それとともにまた気分に影響を与えたりすることがあります。

また、「感情」が起こる原因はわかりやすいが(例えば、割り込みをされて怒りという感情が沸いたなど)、なぜこのような「気分」になっているんだろうというのは、原因がわかりづらいことが多い(例えば、知らずに街のムードに影響されていたなど)という違いがある。

双極性Ⅰ型とⅡ型の違いは?


・Ⅰ型は、躁とうつのどちらも激しい状態で、気分の落差が激しいことが特徴的。躁状態では社会的な問題を起こしやすくなります。

・Ⅱ型は躁とうつがⅠ型に比べると症状が軽めで、躁も「軽躁」と呼ばれる比較的軽い状態があります。

・ダナーによると双極II型がⅠ型や単極性のうつよりも、自殺企図などのリスクが高いという研究がある。


ICD-10の診断基準

ICD-10のコード分類では、気分(感情)障害としてF30-F39に分類。

マニック&バイポーラー


(F30)躁病エピソード

0.軽躁病 (F30.0)

比較的気分の持続的な軽度の高揚、気力と活動性の増加、しばしば幸福感の亢進と著明な心身能力増進感である。社交性増大多弁、過度の馴れ馴れしさ性的活力増大及び眠欲求減がしばしば存在するが、仕事の大きな破綻を招いたり、社会的に排除される程にまでは至らない。 通常は多幸的で社交的であるが、それが燥感思い上がり粗野な行動に替わることもある。気分と行動の障害に幻覚又は妄想を伴うことはない

1.精神病症状を伴わない躁病F30.1)

患者が置かれた状況とは不釣り合いに気分が高揚し、呑気な陽気さからほとんど制御できない興奮に至るまでの間で変化する。 気分高揚は活力増大を伴い、活動過多談話心迫 睡眠欲求減少を生じる。 注意を持続できず、しばしば転導性が亢進する。自尊心は増大し、誇大観念自信過剰を伴う。正常な社会的抑制の喪失は、無謀で向こう見ずな、又は状況に対して不適切な、その人らしくない行動を生じることがある。

2.精神病症状を伴う躁病F30.2)

上記F30.1に記載された臨床像に加えて、妄想(通常は誇大的)又は幻覚(通常は患者に直接話しかけて来る幻声)が存在し、興奮運動活動性過多観念奔逸が非常に極端なので患者は通常のコミュニケーションでは了解でき、また接近できない

・躁病性昏迷

・精神病症状を伴う躁病

8.その他の躁病エピソードF30.8)

・反応性興奮 

・躁病発作

9.躁病エピソード,詳細不明F30.9)

・単極性躁病

・躁状態

(F31)双極性感情障害(躁うつ病)

特徴は、患者の気分と活動性水準が著明に障害されるような2回以上のエ ピソードがあることで、 ある時には気分が高揚し意欲と活動性が亢進するが(軽躁病又 は躁病)、 他の場合には気分が沈滞し意欲と活動性が低下する(うつ病)。 軽躁病又 は躁病のエピソードだけを反復している患者はその他の双極性感情障害として分類する。

含:躁うつ病躁うつ病性精神病躁うつ病反応

 

0.双極性感情障害, 現在軽躁病エピソードF31.0)

現在軽躁病であり、過去に少なくとも1回感情病エピソード軽躁病躁病うつ病又は混合性)があった。 

1.双極性感情障害、現在精神病症状を伴わない躁病エピソードF31.1)

 

現在躁病精神病症状はなく(F30.1 のように)、過去に少なくとも1回感情病エピソードがあった。

2.双極性感情障害、現在精神病症状を伴う躁病エピソードF31.2)

現在躁病精神病症状があり(F30.2 のように)、過去に少なくとも1回感情病エピソードがあった。

3.双極性感情障害、現在軽症又は中等症のうつ病エピソードF31.3)

現在、軽症又は中等症のつ病エピソード(F32.0 又はF32.1)と同様のうつ病であり、過去に少なくとも1回の十分確実な軽躁病躁病又は混合性感情病のエピソードがあった。

双極性感情障害・軽症のうつ病エピソード

双極性感情障害・中等症のうつ病エピソード

4.双極性感情障害、現在精神病症状を伴わない重症うつ病エピソードF31.4)

現在精神病症状を伴わない重症うつ病エピソード(F32.2)と同様のうつ病であり、過去に少なくとも1回の十分確実な軽躁病、躁病又は混合性感情病のエピソー ドがあった。

5.双極性感情障害、現在精神病症状を伴う重症うつ病エピソードF31.5)

現在精神病症状を伴う重症うつ病エピソード(F32.3)と同様のうつ病であり、過去に少なくとも1回の十分確実な軽躁病躁病又は混合性感情病のエピソードがあ った。

6.双極性感情障害、現在混合性エピソードF31.6)

過去に少なくとも1回の十分確実な軽躁病躁病うつ病又は混合性感情病のエピソードがあり、 現在は躁病うつ病との症状が混合するか、急速に変化する病像を示している。

7.双極性感情障害, 現在寛解中のものF31.7)

過去に少なくとも1回の十分確実な軽躁病躁病又は混合性感情病のエピソードがあり、それに加えて少なくとも1回うつ病軽躁病躁病又は混合性感情病のエピソードがあったが、現在はいかなる著明な気分障害にもり患しておらず、またここ数か月間はり患していなかった。 

8.その他の双極性感情障害F31.8)

循環型躁うつ病

反復性躁病エピソード

双極2型障害

9.双極性感情障害、詳細不明F31.9)

周期性精神病

躁うつ病

双極性感情障害

双極性障害

双極1型障害

ディプレッション


(F32)うつ病エピソード

通常、軽症または中等症では気分沈滞及び意欲減退、活動性低下にり患している。生活を楽しみ、何かに興味を持ち、何かに集中する能力が障害され、最小限の努力をしただけでも後では著明な疲労感を生じるのが普通である。 通常は睡眠が障害され、食欲も減退する。自尊心と自信はほとんど常に低下し、軽症型でも何らかの罪責念慮又は自己無価値感がしばしば存在する。気分沈滞は来る日も来る日もほとんど変化せず、環境の変化にも反応せず、い わゆる“身体的”症状を伴い、物事への興味や嬉しいという感じが失われ、朝起きる普通の時間よりも数時間も早く目覚めてしまう。抑うつ気分は朝が最悪であり、著明な精神運動性減退、激越興奮、食欲喪失、体重減少、性欲喪失がある。これらの症状が存在する数及び重症度によって、うつ病エピソードを軽症、中等症又は重症と特定することができる。

含:うつ病性反応の単発エピソード 、心因性うつ病の単発エピソード、反応性うつ病の単発エピソード

0.軽症うつ病エピソードF32.0)

上の症状のうちの2~3種類以上があり、これ らの症状で悩まされはするが、ほとんどの活動遂行が可能

1.中等症うつ病エピソードF32.1)

上の症状の4種類以上が存在し、日常的活動を続けることに多大の困難を感じる。 

2.精神病症状を伴わない重症うつ病エピソード(F32.2

数種類の症状が著明にあり、 自尊心の喪失と、 自己無価値感罪責念慮ある。 自殺念慮自殺企図は一般的に見られ、通常いくつもの“身体的”症状が存在する。

精神病症状を伴わない単発エピソード (・激越うつ病 ・大うつ病 ・生気うつ病

3.精神病症状を伴う重症うつ病エピソード(F32.3

F32.2の他に、さらに幻覚妄想精神運動抑制又は昏迷が非常に重症で通常の社会的活動は不可能になる:自殺又は脱水飢餓による死の危険があることがある。 幻覚と妄想は気分に調和していることもしていないこともある。 

次の単発エピソード: (  ・精神病症状を伴う大うつ病   ・心因性抑うつ精神病   ・精神病性うつ病   ・反応性抑うつ精神病

8.その他のうつ病エピソード (F32.8

 非定型うつ病   ・“仮面”うつ病の単発エピソード

9.その他のうつ病エピソード (F32.9

(F33)反復性うつ病性障害 

 うつ病エピソード(F32.-)を反復することであるが、 気分高揚と意欲増進(躁病)の独立したエピソードは過去の病歴に1回もない。 しかし軽症の気分高揚と活動過多(軽躁病)の短いエピソードがうつ病エピソードの直後に見られる場合があり、 時には抗うつ薬治療がそれを促進することがある。 反復性うつ病性障害のより重症型(F33.2及びF33.3)は躁うつ病やメランコリー、生気うつ病及び内因性うつ病といった以前からの概念と共通点が多い。 第1回目のエピソードは小児<児童>期から老年期に至るどの年齢で生じてもよい。 発病は急激のことも緩徐のこともあり、障害の持続期間は数週から数か月位の幅がある。 反復性うつ病性障害の患者に躁病のエピソードが生じるのではないかという危険性が完全に消え去ることはないが、 実際に患者たちが経験して来たのは、多くのうつ病エピソードなのである。 もしも躁病エピソードが生じたら、 診断は双極性感情障害<躁うつ病>(F31.-)に変更するべきである。 

 含:    反復エピソード:    ・うつ病性反応    ・心因性うつ病    ・反応性うつ病    ・季節性<型>うつ病性障害 

0.反復性うつ病性障害、現在軽症エピソード(F33.0)

うつ病エピソードが反復しており、現在のエピソードはF32.0にあるように軽症であって過去に躁病の既往はない

1.反復性うつ病性障害、現在中等症エピソード(F33.1)

うつ病エピソードが反復しており、現在のエピソードはF32.1にあるように中等症であって過去に躁病の既往はない

2.反復性うつ病性障害、現在精神病症状を伴わない重症エピソード(F33.2)

うつ病エピソードが反復しており、現在のエピソードはF32.2にあるように精神病症状を伴わない重症なものであって、過去に躁病の既往はない。    ・精神病症状を伴わない内因性うつ病   ・精神病症状を伴わずに反復する大うつ病   ・精神病症状を伴わないうつ病型の躁うつ病 ・精神病症状を伴わずに反復する生気うつ病 

3.反復性うつ病性障害、現在精神病症状を伴う重症エピソード(F33.3)

 うつ病エピソードが反復しており、現在のエピソードはF32.3にあるように精神病症状を伴う重症なものであって、 過去に躁病の既往はない

・精神病症状を伴う内因性うつ病   ・精神病症状を伴ううつ病型の躁うつ病  次の反復性重症エピソード・精神病症状を伴う大うつ病   ・心因性抑うつ精神病   ・精神病性うつ病   ・反応性抑うつ精神病

(F34)持続性気分 (感情)障害 

持続性でいつも変動している気分障害で、個々のエピソードの大多数は軽躁病又は軽症うつ病エピソードの記載に該当するほど十分には重くない。 この障害は長年続き、時には患者の成人後の人生の多大な部分にわたって続くので、かなりの苦痛と能力障害を引き起こす。 ある時には持続性感情障害の上に反復性又は単発の躁病又はうつ病のエピソードが付け加わることがある。 

0.気分循環症(F34.0)

抑うつ軽度の気分高揚の時期が数多くあるような、気分の持続的な不安定性がある。 気分変動のどれを取っても、双極性感情障害<躁うつ病>や反復性うつ病性障害と診断するのに十分なほどには重くないし、長引かない。 この障害は双極性感情障害の患者の血縁者にしばしば見出される。 気分循環症の患者でついには双極性感情障害を発現するものもある。   

・情緒性人格障害   ・循環病質(性)人格   ・循環気質(性)人格 

1.気分変調症(F34.1)

少なくとも数年間は持続する慢性の抑うつ気分であるが、それほどは重症でなく個々のエピソードもそれほどは遷延しない、 反復性うつ病性障害のどの型の診断にも適合しない。

・抑うつ神経症   ・抑うつ性人格障害 ・神経症性抑うつ   ・持続性不安抑うつ 

(F38)その他の気分(感情)障害 

重症度又は持続期間が不十分であるために、F30-F34のどれにも適合しないような、その他のあらゆる気分障害。 

0.その他の単発性気分(感情)障害(F38.0)

・混合性感情エピソード

1.その他の反復性気分(感情)障害(F38.1)

・反復性短期うつ病エピソード



双極性障害の心理検査

  • MDQ=自記式気分障害質問票
  • BSDS=バイポーラー・スペクトラム診断スケール(Ⅱ型の感度が高い)
  • YMRS=ヤング躁病評価尺度

うつ病の心理検査

  • BDI=ベックうつ病尺度
  • HAM-D=ハミルトンうつ病評価尺度
  • SDS=自己評価式抑うつ性尺度
  • CES-D=うつ病自己評価尺度
  • SRQ‐DⅡ=うつ病スクリーニング検査、質問紙
  • EPDS=エジンバラ産後うつ病質問票
  • GDS-15-J=老年期うつ検査
  • SASS-J=自記式社会適応度評価尺度(うつ病患者の社会復帰評価尺度)

 

 

 

双極性障害の薬物療法

うつ病の薬物療法

TMS(経頭蓋磁気刺激法)

TMS(Transcranial Magnetic Stimulation)

磁気刺激によって、うつに関わっていると言われる、前頭葉(背外側前頭前野を含む)に作用するという事です。

ECT(電気けいれん療法)などよりも体への負担が少なく、副作用も少なく、安全性も高いといわれています。

日本では2019年に厚生労働省により、rTMS(repetitive Transcranial Magnetic Stimulation:反復経頭蓋磁気刺激療法)が治療としての保険適応が認められたとのこと。

岡田斗司夫さんが、「ひとの気持ちが聴こえたら ‐ 私のアスペルガー治療記」という本/映画について解説しています。ここにTMSについての説明などもあります。