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バイロン・ケイティのザ・ワーク

エピクテトス ザ・ワーク バイロン・ケイティ 
エピクテトス

エピクテトス「私たちの心を乱すのは、現実に起きていることではなく、起きていることに対する考えである」

まず、苦しみの元になっているものを書き出してみよう

 紙など何かに書き出すということは、外在化(がいざいか)と呼び、問題をいったん自分の外に置くということになります。

 多くの苦しみをもたらすものというのは、「他者」の言動や態度ではないでしょうか?

 あるいは、自分自身にさえも、その他者に対する赦せなさや苛立ちなど、「自分自身の狭量さ」というものを理由に刃を向けることがあります。

 多くは、人を裁くということから苦しみや葛藤が起こってきます。そして自分自身さえも裁きます。

 ここでは、「自分が嫌いだと思っている人」、「心配になる人」、「自分を怒らせる人」、「怖がらせる人」「悲しませる人」、「相反する気持ちを抱いたり」、「困惑させられる人」などを書き出します。

 ちなみに、バイロン・ケイティさんはジャッジメント・ワークシートと呼ばれるものを無料で公開しています。ただの白紙でもいいと思いますが、せっかく無料で提供されているので活用してみましょう。

テーマ「私はリンダに対して怒っている。なぜなら彼女は私に感謝してくれないから」

 赦していない誰かについて、自己検閲しないで簡潔に書きます。

 

 その人とのやり取りがいま行われているかのように、リアルに鮮明に感じながら、その人を裁いている考えを書いてみましょう。


 

1.怒り、混乱、悲しみ、失望などをもたらしている特定の人を挙げます。それはなぜか?を問います。

 

私は、_______(例:リンダ)に対して、___________(例:怒っている)。なぜなら、________________________________(例:彼女は感謝しないから。)

2.その人にどう変わってほしいですか?何をしてほしいですか?

 

私は、_______(例:リンダ)に、____________________________(例:感謝してほしい。)

3.その人が、すべき/すべきでないこと、考えるべきこと/べきでないことは何ですか?あなたは、どのようなアドバイスをしますか?

 

_______(例:リンダ)は、__________________________(例:もっと他者に感謝を感じるべきである。彼女は人のことを軽く扱うべきでない。もう少し謙虚になったほうがよい。)すべきである/すべきでない。

4.あなたが幸せになるため、その人はどうする必要がありますか?

 

私は、_______(例:リンダ)に、________________________________(例:もっとありがたみを感じてもらい、感謝してもらう必要がある。彼女にもっと尊重してもらう必要がある。)

5.その人のことをどう思いますか?リストアップしましょう。

 

_______(例:リンダ)は、____________________________(例:傲慢で、不誠実で、鈍感で自覚がない。)

6.その人との間で、二度と体験したくないことは何ですか?

 

私は二度と、________________________________(例:リンダから感謝されていないと感じたくない。リンダから無視されたり、軽く扱われたくない。)

↑これらを基に、↓次の「4つの質問」と、「置き換え」に進んでいきましょう。自己探求です。

ザ・ワーク バイロン・ケイティ ジャッジメント

ザ・ワークの4つの質問

①それは本当ですか? →「はい」なら②へ、「いいえ」なら③へ

②その考えが絶対に本当だと言い切れますか?

③その考えを信じるとき、あなたはどう反応しますか?

④その考えがなければ、あなたはどうなりますか?

例:

①それは本当ですか? →「はい、本当です。彼女はいつも感謝がありません。当たり前だと思っています。」

②その考えが絶対に本当だと言い切れますか?→「毎回ではないが、はい。ほとんど言葉に出して感謝を伝えることが少ない。もしかしたら心の中で感謝をしているかもしれないが。」

③その考えを信じるとき、あなたはどう反応しますか?→リストアップ「黙り込む。自分も感謝せず、仕返しをする。逆に気付いてもらうように大げさに感謝を伝える。自分を閉ざす。落ち込む。たくさん食べたり、寝たりする。」

④その考えがなければ、あなたはどうなりますか?→「イライラせずに、明るく落ち着いてやさしく過ごせる。」


 ここからが、このザ・ワークのだいご味である置き換えのワークです。

置き換え(反転)

「自分自身」に置き換える → (私は、私自身に感謝をしない。) 

「主語」を置き換える → (私は、リンダに感謝をしない。) 

③「内容を反対」に置き換える → (リンダは、私に感謝をしてくれる。)

例:

1.私は、「リンダ」に対して、怒っている。なぜなら、「彼女は、わたしに感謝しない」から。

①私は、私自身に怒っている。なぜなら私が、私自身に感謝をしないから。

②リンダは私に怒っている。なぜなら、私はリンダに感謝しないから。

③私はリンダに怒っていない。なぜなら、リンダは私に感謝をしてくれるから。

 

2.私は、「リンダ」に、「感謝してほしい」。

①私は、私自身に感謝をしてほしい。

②リンダは、私に、「感謝してほしい」。

③私はリンダに感謝してほしくない。

 

3.「リンダ」は、「もっと他者に感謝を感じるべきである。」「彼女は人のことを軽く扱うべきでない。」「もう少し謙虚になったほうがよい。」

①私は、もっと私自身に感謝を感じるべきである。私自身のことを軽く扱うべきでない。私自身に対してもう少し謙虚になったほうがよい。

②私は、リンダにもっと感謝を感じるべきである。リンダのことを軽く扱うべきでない。もう少し謙虚になったほうがよい。

③リンダは、他者に感謝を感じ、人を丁重に扱い、謙虚である。

 

 

4.私は、「リンダ」に、「もっとありがたみを感じてもらい、感謝してもらう必要がある。」「彼女にもっと尊重してもらう必要がある。」

①私は、私自身に、もっとありがたみを感じ、感謝する必要がある、自分自身をもっと尊重する必要があると考える。

②リンダは、私に、もっとありがたみを感じてもらい、感謝してもらう必要がある。私にもっと尊重してもらう必要がある、と考える。

③私は、リンダに、ありがたみを感じず、感謝する必要はない、彼女に尊重してもらう必要がない、と考える。

 

5.「リンダ」は、「傲慢で」、「不誠実で」、「鈍感」で「自覚がない」。

①私は、私自身に対して傲慢で、不誠実で、鈍感で自覚がない。

②私は、傲慢で、不誠実で、鈍感で自覚がない。

③リンダは、傲慢ではなく、誠実で、敏感で自覚がある。

 

6.私は二度と、「リンダから感謝されていないと感じたくない。」「リンダから無視されたり、軽く扱われたくない」。

私は、私自身に感謝しなくても構わない。私自身を無視したり、軽く扱うのを楽しみにしている。

②リンダは、私から感謝されなくても構わない。私から無視されたり、軽く扱われるのを楽しみにしている。

私は、リンダから感謝されなくても構わない。リンダから無視されたり、軽く扱われるのを楽しみにしている。

 

 

ザ・ワークのすばらしいところ

 バイロン・ケイティさんのザ・ワークはセルフワークで自己探求ができるところも素晴らしいと思います。

 このワークの中でもとりわけ、最後の「置き換え」の部分がパワフルです。

 

”あなたが、自分の問題の原因は「外」にあり、誰かや何かのせいだと考えている限り、状況が改善する見込みはありません。あなたは永遠に被害者にとどまり、本来は平和の中にいられるにもかかわらず、苦しんでいるのです。ですから、自分に真実を取り戻し、自分を解放しましょう。質問と置き換えの組み合わせは、本質的自己に気づくための早道です。” 

バイロン・ケイティ - ザ・ワーク 人生を変える4つの質問 - P.158

 

”例:「ポールは不親切だ」⇒置き換え「私は不親切だ」

 自分をふりかえり、この置き換えた文章が自分の日常で当てはまると思える状況を見つけましょう。あなたはポール(適切な名前に変えてください)に不親切だったこともありますか?

 まず、「ポールは不親切だ」と考えるとき、あなたがどのように反応するか、彼にどう接するかを検討しましょう。ポールを不親切だと感じる瞬間、自分が彼に対して不親切になっていませんか? ポールが不親切だと信じ込んでいるときの感覚を味わってみてください。体がこわばり、心臓の鼓動が速まり、顔が紅潮しているかもしれません。この状況は、自分自身に優しいと言えるでしょうか? 批判的で、防衛的になっていないでしょうか? 心の中で、どう感じているでしょうか? こうした反応は、探求されていない考えがあるためなのです。

 例えば、ポールが侮辱してくるとき、あなたは頭の中でその場面を何度再現しますか? 今日、一度だけあなたを侮辱したポールと、彼のただ一回の侮辱を何度も頭の中で再現したあなたでは、どちらがより不親切でしょうか。そして、あなたの感情は、ポールの行動そのものの結果でしょうか? それとも、彼の行動に対する自分自身の価値判断によるものでしょうか?

 少しの間、静かに味わい、深めてください。その際には、自分自身の領域にとどまり、ポールの領域にはふみこまないように注意してください。”

バイロン・ケイティ - ザ・ワーク 人生を変える4つの質問 - P.159-160

気づき ⇒ 行動(実践)

 置き換えをやってみると、相手の中にあると思っていたことが実は自分自身の中にあったということに「気づく」かもしれない。

 以前に紹介した、「投影」や「合理化」をして、本質(自己を探る)を見なくてすむように習慣づけてきたのかもしれません。

 ですから、先ず「気づき」がないと自己探求は始まらないということです。

 ここで言われている重要なことは、できるだけたくさんの置き換え例を見つけることではなく、自分が知らないうちに執着している悪夢のような考えから解放してくれる文章を探すことで、そういう自分のもっとも深いところに入ってくる文章が見つかるまで元の文章を置き換えることが勧められています。

 

 「気づいた」あとに、「行動」をすることでよりパワフルに変容が生まれます。これはACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー。英語のACTは「行動」という意味でもある)でも勧められている。なぜなら我々が主体的にコントロールできるものは、思考や感情ではなく、行動なので、「行動」にアプローチをしていくことのみができる。

 私たちは他者に対して、自分の信念に基づいて無理筋な行動を要求してきたことに気づくかもしれません。

 この本では、具体的な行動として「償い」「相手に報告する」というものを紹介しています。それらは、スピーディーで強力なものです。

 

 ”例えば、あなたが人にずっと説教してきたことに気がついたら、その人たちのところへ行って、 「償い」をします。彼らに求めていたことを自分自身が実行するのは難しいことを伝えるのです。また、ほしいものを得るため、あなたがどのように彼らのことを操作したり、だましたり、 怒ったりしたか、また、セックスやお金、罪悪感をどう利用したかについても話しましょう。

 私は、人に気前よくあげていたアドバイスを自分自身が必ずしも実行できませんでした。そのことに気づいたとき、自分が裁いた相手と同じ立場に立っていることがわかりました。自分の信条は、誰にとっても実践しやすいものではないことがわかったのです。また、私たちの誰もが、最善を尽くしているのだということも。ここから、謙虚に生きるということが始まるのです。

 「相手に報告する」というのも、心の真実に目覚めるためのパワフルな方法です。現実に目覚めた後の一年間、私は自分がかつて価値判断を下していた人たちと会って、自分が行った置き換えと、その結果、気づいたことについて話しました。彼らに報告したのは、抱えていた問題に関する自分についての発見だけで、いかなる状況でも、相手の問題については言及しませんでした。そうしたのは、私の話を聞いてくれる、自分以外の証人が必要だったからに他なりません。”

バイロン・ケイティ - ザ・ワーク 人生を変える4つの質問 - P.164

ザ・ワークの基本的な考え方

1.自分の考えが現実と闘っていることに気づく

ある信念をもとに、現実に闘いを挑むこと。これらが毎日の生活の中で何度も何度も繰り返されています。「人はもっと思いやりを持つべきだ」、「スーパーのレジはもっと早く進むべきだ」など無数の現実に抵抗する考えです。現実と闘えば100%負けます。抵抗することによる緊張やストレスなどが、いわゆる「苦しみ」と呼ばれるものの正体だと思います。抵抗や内面の葛藤なしに、ものごとをあるがままに見ることは可能です。

 

2.自分自身の領域にとどまる

この世には、3種類の領域「私の領域」「あなたの領域」「神の領域」しかない。

上でいう「現実」が神を意味します。気象などだれもがコントロールできないものは「神の領域」でしょう。あたまの中で考える「(あなたは)もっと幸せになってほしい」「(あなたは)時間通りに来るべきだ」などは、「あなたの領域」でありそこに入り込んでしまっています。アドラー言うところの「課題の分離」が必要でしょう。

 

3.自分の考えを理解する

「考え」それ自体は信じなければ無害です。それらは、どこからともなくやってきては消えていく雲のように眺めていれば何の害もありません。考えは信じなければ無害です。長い間、思い込んだり、執着してきた考えのことを「信念(ビリーフ)」といいます。執着するということは、1つの雲をずっととどめておこうとする無駄な努力であり、そんなことはできないのです。

「自分の考えを手放すのではなく、理解する。すると、考えの方が、私を手放してくれる」

 

4.自分のストーリーに気づく

「現実」だと思い込んでいる「考え」を「ストーリー」と呼ぶ。ストーリーは検証や探求していないも関わらず、何らかの意味づけをしている「考え方」。これらの折り重なったストーリー、何が起きているのか、検証しないまま信じ込んだ考えに基づいて動き、そのことに気づいてさえいないのは、夢の中にいることと同じです。ワークをすることで、「それが本当かどうか」を検証することができます。

 

5.苦しみの背後にある考えをつきとめる

すべての不快な感情の背後には、真実でない考えが隠れている。「風が吹いてほしくない」など現実に抵抗する考えをもつことでストレスを感じ、それを解消するために他者を変えようとしたり、お酒やお金、薬物など外側に解決を求めることで、さらに苦しみを長引かせます。つまり、落ち込みや痛み、恐れなどの苦しみは「あなたは真実ではないストーリーの中で生きていますよ。」と気づかせてくれる優しい目覚まし時計だということです。何が真実ではないのかという理解によって、自然に離れることができます。

(考えを持つ前)苦しんでいない⇒(考えを持つことによって)苦しむ⇒(理解によって考えを手放すことによって)苦しみがなくなる。

 

6.問いかけ(探求)

問いかけという方法は、混沌に見える世界であっても混乱を終わらせ、内なる平和をもたらします。

私たちが必要とするすべての答えは、いつでも自分の中にあると気づかせてくれます。

ザ・ワーク

おどろくべきことにワークシートが無料で提供されています。

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人生を変える4つの質問 人生を変える4つの質問

バイロン・ケイティ (著), スティーヴン・ミッチェル (著), 神田房枝 (翻訳), ティム・マクリーン (監修)