・かつては、「ノイローゼ Neurose(ニューロは神経を表す)」や「神経症」といった呼ばれ方をしていた。
・心因的なものがおもな原因と考えられることが多く、認知の仕方や考え方のクセ(いわゆるとらわれ)+外的な出来事(身近な人との死別など急激な環境的変化、家族や対人関係での慢性的ストレスや心理的葛藤、生育環境などで培われたものなど)を契機に発症することがある。
・極端に過大な、恐怖や不安や、強迫など。
・大きくわけて
①社会不安障害、②パニック障害、③全般性不安障害、④強迫性障害の4つがある。
ICD-10では、F40-F48に分類され、神経症性障害、ストレス関連障害及び身体表現性障害となっている。
ここでは、神経症性障害(F40-F42)のみを分けて記述していく。
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現実には危険のない状況であるのに、一定の明確な状況においてだけ、又は主としてそういう状況で不安が誘発される一群の障害である。その結果として、それらの状況は特徴的に回避され、又は恐怖をもって耐え忍ばれる。 患者の関心は動悸や失神しそうだと言うような個々の症状に集中しており、しばしば死や自制喪失や狂気への二次的恐怖に関連している。
恐怖症状況へ入ることを頭で考えただけでも、通常は予期不安が発生する。 恐怖症性不安はうつ病としばしば共存する。
かなり明確な一群の恐怖症であり、次のものに対する恐怖を含む
家を離れること、店・群衆及び人の集まる場所に入ること、列車やバス、飛行機での一人旅。
恐慌性<パニック>障害は現在と過去の両者のエピソードでしばしば特徴的に見られる。
うつ病症状と強迫症状と社会恐怖は副次的な症状としてしばしば見られる。
恐怖状況の回避は顕著に見られ、恐怖症患者の中には恐怖状況を回避できるのでほとんど不安を感じないという人もいる。
・恐慌性<パニック>障害の既往のない広場恐怖(症)
・広場恐怖(症)を伴う恐慌性<パニック>障害
他人に見つめられる(視線)恐怖は, 社交状況の回避に導く。 より広い範囲におよんだ社会恐怖(症)は通常自尊心低下と批判恐怖に関連している。
赤面, 手指振戦, 吐き気, 又は尿意促迫が見られることがある。
患者は時として不安の二次的徴候の一つを根本の問題だと信じてしまうことがある。 症状は恐慌<パニック>発作へと進行する。
・対人恐怖(症)
・社会神経症
非常に特異的な状況に限定された恐怖症で、 次のようなことへの接近状況が恐怖症を生じる:
特別の動物、高所、雷くらやみ、飛行、閉所、公衆便所での排尿や排便、特定の食物を食べること、歯科受診、出血・負傷の光景。
誘発状況には個人差があるが, それに接触すると, 広場恐怖(症)や社会恐怖(症)の場合のように, 恐慌<パニック>を誘発する可能性がある。
・高所恐怖(症)
・動物恐怖(症)
・閉所恐怖(症)
・単一<単純>恐怖(症)
除外: 醜形恐怖(症)(非妄想性)(F45.2) 疾病恐怖(症)(F45.2)
不安の出現が主要な症状であり、それはどんな特別な環境状況にも限定されていない。
抑うつや強迫症状さらには恐怖症性不安の何らかの要素すら存在することがあるが、それらの症状は明らかに二次性又はより軽症である。
本質的特徴は、反復する高度の不安発作と恐慌<パニック>であり、それは特別の状況又は一定の環境に限定されないので、予知不能である。
他の不安障害と同じように、主要な症状としては突然始まる動悸、胸痛、窒息感、めまい及び非現実感(離人症又は現実感消失)がある。
また、死んでしまうとか、自制心を失うとか、気が狂いそうだという二次的な恐怖もしばしばある。
もしも患者が発作の発症時にうつ病性障害であれば, 恐慌性<パニック>障害を主要診断とするべきではない。
そのような場合には、恐慌<パニック>発作はおそらくうつ病に二次性のものであろう。
・恐慌<パニック>発作
・恐慌<パニック>状態
全般性で持続性の不安であり、それは特別の環境状況において非常に優勢であったとしても、その環境状況に限定されることはない(つまり“浮動性”である)。
主要症状は変動するが、それに含まれる訴えとしてはいつも神経がいらいらする、身震いがする、筋肉の緊張感、発汗、頭がふらふらする、動悸、めまい、心窩部不快感などがある。
患者又は親類縁者が近い内に病気になるとか事故に遭うとかいう恐怖その他の心配ごとがしばしば述べられる。
・不安神経症
・不安反応
・不安状態
除外: 神経衰弱(F48.0)
不安と抑うつの症状が両者とも存在する場合に用いられるべきである。 しかし不安と抑うつのどちらも明らかに優勢とは言えず、どちらのタイプの症状も個別に考えた場合一方の診断を付けるほどには重症ではない。
不安と抑うつの両者の症状が存在して、個々の診断を付けるのに十分なほどに重症である場合には、両者の診断名が記録されるべきであり、本項目は用いられるべきでない。
・不安抑うつ(軽症又は非持続性)
・不安ヒステリー
本質的特徴は反復する強迫思考又は強迫行為である。
強迫思考は患者の心に繰り返し繰り返し決まりきった形で浮かんで来る考えや、イメージ又は衝動である。
それはほとんど常に患者を悩ませるものであり、患者はしばしばそれに抵抗するが、成功しない。 強迫思考は不随意的であり、しばしば不愉快なものであるが、患者自身の考えだと認識されている。
強迫行為又は強迫儀式は決まりきった行動を繰り返し繰り返し反復するものである。 それらは元来楽しいものではなく、もともと有益な仕事をやり遂げるといったものではない。
その働きは、客観的にはありそうもないできごとが起こるのを防ぐことである。 ありそうもないできごととして、しばしば見られるのは他人から害を与えられるとか、患者が他人に害を与えてしまうということで、患者は強迫行為をしなければそれが起こってしまうと心配するのである。
通常、強迫行動は患者によって無意味で無駄なものだと認識されており、抵抗する試みが繰り返してなされるが、不安はほとんど変わらずに存在する。
この強迫行為に対して抵抗すると不安がより強くなる。
含む: 制縛神経症 強迫神経症
含まない: 強迫性人格(障害)(F60.5)
強迫思考は考え、精神的イメージ又は行為への衝動という形をとり、ほとんど常に患者を悩ませるものである。
時には、その考えは些細な事だが日常生活では決定しなければならないことができなくなってしまうことに関連して、ものごとが決められず、終わりなくそれに替わるものを考えていることになる。
強迫的反芻とうつ病との関係は特に密接であり、強迫障害の診断は反芻がうつ病エピソードのない時に生じて持続する場合にのみ選ばれるべきである。
強迫行為の大多数が関係しているのは清潔にすること(とくに手洗い)、 潜在的に危険な状況が進展しないことを確認するために反復照合すること、又は整理整頓などである。
実際に現れる強迫行動の基礎にあるのは、患者に対する危険又は患者により引き起こされる危険への恐怖であり、強迫儀式は危険を避けるための無駄な試みないしは象徴的試みである。
これらの障害は、発達における傾向それ自身に見られる質的に異常な現象というよりは、むしろ主として正常な発達の傾向の誇張である。
発達における適切さが、この小児(児童)期に特異的に発症する情緒障害(F93.-)と神経症性障害(F40 - F48)との鑑別における診断的特徴の鍵として用いられる。
含まない:行為障害に関連する場合(F92.-)
分離不安障害の診断は、分離に対する恐怖が不安の焦点になっていて、そのような不安が小児<児童>期の初期に最初に生じたときにのみなされるべきである。
正常な分離不安とは、その程度(重篤さ)が統計的に通常でない(通常見られる年齢的期間を超えた異常な持続を含む)場合、また、著しく損なわれた対人的機能を伴う場合に区別される。
含まない:
気分(感情)障害(F30-F39)、神経症性障害(F40-F48)、小児<児童>期の恐怖症性不安障害(F93.1)、小児<児童>期の社交不安障害(F93.2)
これは小児(児童)期におけるさまざまな恐怖にかかわっている。恐怖は、著しい発達段階特異性を示し、それらは大部分の子供に(ある程度は)生じてくるが、その程度が異常である。小児(児童)期に生じてくる恐怖であって、正常な心理社会的発達の部分ではないもの(たとえば広場恐怖(症))は、F40-F48 の適切な分類項目のもとにコードしなければならない。
含まない:全般性不安障害(F41.1)
この障害においては、見知らぬ人々に対する恐れ及び新たな、見知らぬ又は対人的に脅威を与えるような状況に出会ったときの対人的不安が見られる。
本項目は、そうした恐怖が年齢の早い段階で生じた場合及びその程度において通常の範囲を越え、さらに社会的障害も伴っている場合にのみ使用するべきである。
小児(児童)期又は青年期の回避的障害
すぐ下の弟妹の誕生にひき続いて起こるある程度の情緒的混乱は、大多数の幼い子供に見られる。同胞抗争障害の診断は、混乱の程度とその持続とが両方とも統計的に通常範囲を超えるもので、しかも社会的障害が伴う場合にのみみなされる。
同胞嫉妬
同一性障害
過剰不安障害
含まない:小児<児童>期の性同一性障害(F64.2)
ある程度の異質なものを含む障害の群で、共通しているのは、発達時期に始まる社会機能面でのさまざまな異常が見られることである。しかし(広汎性発達障害とはちがい)明らかに体質的な社会的不能又は機能の全域におよぶ欠陥によって一次性に特徴づけられるものではない。多くの症例では重大な環境の歪みや環境遮断が病因としておそらく決定的な役割を演じている。
これは、話すことに関して顕著な、情緒的に決定された選択性によって特徴づけられている。つまり子供はある状況下では、言語の能力を発揮するが、しかし他の(限定できる)状況下では話すことができない。
この障害は通常は対人不安、引っ込み思案、過敏性又は抵抗などが含まれるような顕著な人格的特徴を伴っている。
選択(性)かん(縅)黙
含まない:広汎性発達障害、統合失調症、会話及び言語の特異的発達障害、低年齢の子供における分離不安の一部としての一過性のかん黙
この障害は、5歳未満に始まり、子供の対人関係におけるパターンの持続的な異常によって特徴づけられ、情緒的混乱を伴い、それは環境の変化に応じて変わる(たとえば、過度の警戒と恐怖, 仲間との対人相互反応の乏しさ、及び相手に対する攻撃、精神的苦痛、及びある例では成長の停止)。
この症候群は、重篤な養育放棄、虐待、重い養育過誤などの直接の結果として生じると見られる。
成長や発達の遅滞の合併を明示することが必要な場合は, 追加コードを使用する。
含まない:アスペルガー症候群、小児(児童)期の脱抑制性愛着障害、虐待症候群、選択的愛着の型における正常の変異、小児<児童>期における性的又は身体的虐待、心理社会的問題となるもの
異常な社会的機能の特殊なパターンで、5歳未満に生じ、環境的状況に著しい変化が生じても、持続する傾向が見られる。
たとえばびまん性の非選択的に向けられる愛着行動、注意を惹こうとする、しかも誰かれかまわぬ親しげな行動、仲間との節制の乏しい相互作用及び状況に応じ情緒的あるいは行動的障害が伴うこともある。
愛情欠如精神病質
施設症候群
含まない:アスペルガー症候群、小児(児童)のホスピタリズム(施設症)、多動性障害、小児(児童)期の反応性愛着障害
LSAS-J(Liebowitz Social Anxiety Scale 日本語版)=リーボヴィッツ社交不安尺度(社交不安症の重症度尺度)
STAI(State-Trait Anxiety Inventory)=状態不安と特性不安評価尺度
CMI(Cornell Medical Index)=問診補助、神経症スクリーニング
MAS ( Manifest Anxiety Scale ) =顕在性不安尺度
CAS(Cattele Anxiety Scale)=キャッテル不安測定検査
GAD-7(Generalized Anxiety Disorder)=全般性不安障害簡易評価尺度
SCAS(Spence Children's Anxiety Scale)=スペンス児童用不安尺度
Y-BOCS(Yale-Brown Obsessive-Compulsive Scale)=エール・ブラウン強迫観念・強迫行為尺度
MOCI(Maudsley Obsessional Compulsive Inventory)=モーズレイ強迫神経症質問紙
LOI(Leyton Obsessional Inventory)=レイトン強迫性検査